テレビやニュースで時折目にする「警察犬」の存在。
訓練で高められた能力を120%発揮し、犯人逮捕や行方不明者の捜索等に大きく貢献する特殊なワンコ達。
人間には真似出来ない方法から、事件や事故を解決に導く様は、警察犬ならではこその活躍とも言えますよね。
今回は、そんな愛らしくも賢く勇敢な警察犬に関するまとめをお伝えしていきます!
警察犬の主な仕事や活動内容
皆様は犬の嗅覚がどれ程のものかご存知でしょうか?
ほんの僅かなお肉やお菓子の匂いでも、クンクン鼻を利かせてはキョロキョロし、隠れて何か食べていても気がついたら見られている…。
思わず「鼻が良すぎない?」と突っ込みたくなった事、犬を飼われている方ならきっと経験された事あると思います。
それもその筈。臭い(匂い)の種類にもよりますが、実は犬の嗅覚は人間の4~6千倍。更に、酸系の臭いなら1億倍と…兎にも角にも嗅覚が優れまくっているんですね。
警察犬とはそんな鋭い嗅覚を活かしながら、主に次の様な活動をしています。
足跡追及活動(跡追及犬)
人間の残した臭いを手がかりに、犯人や犯人の遺留品を発見する事を目的とする活動。
またターゲットとする人の臭いをもとに、行方不明者や迷子、彼らの移動経路を辿ったりといった捜索活動も含まれます。
臭気選別活動(気選別犬)
犯行現場にあった臭気や遺留品の臭いと、容疑者と思われる人物の臭いが一致するかどうかを選別する活動。
警察犬が行うこの臭気選別の結果は、裁判で物的証拠として認められる程に重要となります。
警戒活動(威警犬)
犯罪者を威嚇したり、パトロールする事で犯罪の抑止を促す活動。
周囲の監視や、護送の際の護衛など、いざという時には逮捕の為の行動を起こす事が出来る様にも訓練されています。
麻薬探知活動(麻薬探知犬)
麻薬類の臭いを嗅ぎ当て、職員に知らせる活動。
空港の税関や港・国際郵便局等といった、言わば日本国への窓口となる場所に常駐しています。
警察犬の種類や訓練方法
勇ましく賢そうなビジュアルのシェパードや、バイオハザードでもお馴染みのドーベルマンなど…いずれも「格好良くて強そう」な見た目が特徴的な警察犬。
やはり警察犬ともなると、そういった特徴を持つ犬種しかなる事は出来ないのか…と思ってしまいますが、そんな事はありません。
下記で警察犬の犬種について解説していきます。
直轄警察犬
各都道府県の警察が直々に飼育し、また管理している警察犬の事を、直轄警察犬(チョッカツケイサツケン)と言います。
警察本部内の直轄警察犬訓練所において訓練が行われ、パートナーとして鑑識課の警察犬担当者がトレーニングから飼育までの面倒を見ているんですね。
そんな直轄警察犬には犬種の指定があり、日本警察犬協会が指定する犬種としては以下の7種類になっています。
・シェパード
・ドーベルマン
・ボクサー
・コリー
・ラブラドール・レトリーバー
・ゴールデン・レトリーバー
(2020年現在)
中でも、運動神経が良く感覚が鋭いシェパードは”足跡追及”を得意とし、落ち着きがあり優秀なレトリーバー種は”臭気選別”を得意とします。
嘱託警察犬
対する嘱託警察犬(ショクタクケイサツケン)とは、出動要請が入った時に出動する、各都道府県の警察が主催している「嘱託警察犬審査会」に合格した民間の警察犬の事を言います。
年に1~2回開催される審査会は、認定期間は1年、県によって資格条件が違ったり犬種を問わない場合もあります。
なので直轄警察犬とは違い、嘱託警察犬として活躍する警察犬の犬種は様々なんですね。
また審査会とは別に、日頃の成果を競い合う「全日本嘱託警察犬競技大会」という、優秀な嘱託犬による競技大会も開催されます。
警察犬訓練学校
実は警察犬として活躍する割合は、直轄警察犬よりも嘱託警察犬の方が遥かに多かったりします。
この実態だけ見ると、「嘱託警察犬って簡単になれるのかな」と思いがちですが…厳しい嘱託警察犬審査会で合格を勝ち取る事は、決して容易な事ではありません。
いくら嗅覚や感覚が優れていようと、訓練無しに警察犬としてその本分を発揮できるワンちゃんはまず居ないでしょう。
その為、民間の警察犬訓練学校に預託訓練という形で預けられる事がほとんとです。
基本的な訓練で6ヶ月前後、更に高度な訓練となるともう6ヶ月前後を必要とする場合が多いので、おおよそ1年半前後を想定すると良いですね。
料金は訓練学校や犬種や能力によっても差はありますが、月に6,7万前後、高くても10万はいかない訓練学校が多い印象です。
有名な警察犬
人間同様、警察犬も警察犬の数だけ当然ストーリーがあります。
少し変わったエピソードを持っている子や、ある事で一気に注目された子などなど、テレビやニュースでも話題になる事は少なくないですよね(^ ^)
そんなちょっとした知名度を誇る、有名な警察犬をいくつかご紹介していきます。
警察犬①:きな子(ラブラドール・レトリーバー)
警察犬の試験に落ち続けること6回。
香川県の丸亀警察犬訓練所で、2004年から訓練を開始したきな子。
初めて挑んだ試験で、障害物を飛び越える際に前足を引っ掛け、なんと顔面から豪快にズッコケてしいます。この時の見事な「ドジっぷり」が地元メディアで取り上げられ、一気に人気者となりました。
しかしそんな人気も虚しく、きな子は翌年も、そのまた翌年も試験に失敗してしまいます。
ようやく合格する事が出来たのは、トレーナーを変えて心機一転臨んだ7回目の試験。38頭中1位という好成績を叩き出しての合格でした。しかも、きな子が苦手とする臭気選別の試験です。
「ズッコケ見習い警察犬」として何度も何度も試験に落ちては挑戦し、ついに合格を掴み取ったきな子。そんな彼女のひたむきさと、諦めない事の大切さに多くの人が感動したのではないでしょうか。
6回目までの試験のトレーナーである、川西智紗さんとの絆と奮闘の物語は、映画化までされる程と…その人気っぷりが何よりの証拠とも言えます。
引退後は広報として活躍し、多くの人に愛されたきな子は、2017年3月20日に訓練所の居間にて安らかに息を引き取りました。
警察犬②:あんず(トイプードル)
この犬、もういりません!!!
2013年、茨城県のある動物指導センターに生後3ヶ月の仔犬を持ち込んだ男性がいました。「どうしてもらっても結構!」と、声を荒げて言い放つ男性が持ち込んだのはトイプードル。
たまたまその場に居合わせた男性が「では、この犬を譲って下さい」と男性に話し、そのトイプードルは引き取られる事になりました。
そのトイプードルこそ未来の警察犬であるあんずです。男性の名前は鈴木博房さん。実はキャリア30年越えの大ベテランの警察犬指導士でした。
ところが鈴木さんは既に自宅で3頭ものシェパードを飼育していた為、あんずは引き取り手がいたら譲渡するつもりだったんですね。
しかし先住犬であるシェパード達は、あんずを受け入れます。そして3頭の中でも特にあんずを気にかけていたのがアミ。まるで母親の様だったと鈴木さんは語ります。
アミが訓練をクリアした際に鈴木さんが褒めると、同じく何かをして褒めて欲しいという気持ちを全身で表現するあんず。ですがこの頃は、まだ警察犬を目指したりはしていなかったそうです。
一緒に散歩をするのも、あんずが少しでも人間社会で暮らしやすくなる様に…といった理由からでした。
そんな鈴木さんの思いとは裏腹に、なんとあんずは集中力を一切欠く事なく基本動作をクリア。更には基本服従といった次のステップもクリア。
他の訓練士や審査員に、もっと上を狙いましょうといった声を頂く程に、あんずは次々に試験をクリアしていったんです。
そしてその頃、新しく鈴木さんの家にやってきたシェパードの仔犬、ディーンと競い合いながらも訓練をこなすあんずを見て、本気で警察犬を目指そうと夢を描いたそうです。
そこから2015年に開催された警察犬審査会で見事に合格!
2018年の時点で21回出動し、4人も不明者を発見する業績から、立派に警察犬として活躍している事が分かります。
虐待を受け、身も心も疲弊し、殺処分寸前だった一匹のトイプードル。
一人の男性との出会いによって救われたあんずの話は、世間にも大きな反響と感動を与えました。
警察犬③:二葉(芝犬)
岡山からは日本犬の代表中の代表、芝犬の警察犬が誕生です。
2011年に3度目の正直で審査会に合格した二葉(ふたば)は、日本犬初の警察犬として大きく注目されました。
頑固でしつけや訓練が難しいとされる芝犬。そんな常識を覆し、見事犬のお巡りさんに育て上げたのが飼い主の久戸瀬さん。
久戸瀬との絆や、二人三脚で歩むその生き方は書籍化もされ、沢山の人の心を鷲掴みにしました。
警察犬④:桃(チワワ)
最後は奈良県の小さな警察犬、桃のご紹介です。
超小型犬であるチワワの桃が、初挑戦となる2010年の審査会にて一発合格!
チワワの警察犬は全国でも非常に稀で、その可愛らしさと驚きから人気爆発。国内のみならず、海外の多くのメディアが取り上げ、世界中から脚光を浴びる事になりました。
小回りの利くその体の小ささを生かし、災害救助犬としても活躍する姿には感銘を受けると同時に、愛おしさが溢れ出します。
警察犬の引退後
沢山の事件の解決、沢山の事件の抑止、沢山の不明者の発見などなど…いっぱいいっぱい活躍してきた警察犬達にも、もちろん引退はやってきます。
そして警察犬が現役で活動するまでの年齢は、大体が10歳前後と言われています。
中には少し違った形で社会貢献を続ける子もいますが、引退後は警察犬から家庭犬へ戻り、静かで穏やかな暮らしをしている子が大半なんですね。
第一線から退き、違う幸せを感じながら余生を過ごす、元・警察犬達の老後を続けてご紹介していきましょう。
パートナーである訓練士にそのまま引き取られる
警察犬訓練学校が所有している犬の場合は、そのままその子の訓練士に引き取られる事があります。
長年連れ添ったパートナーだけに性格も分かっていますし、当然信頼関係も結べているので、ワンちゃんにとっても安心です。
同じく嘱託警察犬のうち、民間から預託されたワンちゃんは、元の飼い主さんの元へ戻る事が大半です。
里親制度
任務を終えて戻ったワンコ達は、譲渡されたり里親に出される事も多いです。
訓練士に引き取られ余生を過ごす事も幸せかもしれませんが、訓練士にはまた新たに警察犬を育てる仕事があります。
その為、引退後の警察犬に割く時間が十分取れなかったりする事があるのです。なので環境と人は違えども、大切に愛情を持って面倒を見てくれる方に託すという選択肢も全然少なくはありません。
厳しい里親条件を提示したり、「大切に育てた犬達が幸せな生活を送れる様な体制」を整えて送り出す事で、訓練士もワンちゃんも安心してその後を過ごす事が出来るのでしょう。
警察署内の施設で過ごす
上記の嘱託警察犬とは違い、直轄警察犬は引退後も警察署内の施設で過ごします。
というのも、直轄警察犬は国の所有物扱いになる為、原則として施設を出たり譲渡する事を禁止としているんですね。
変わらない環境で、引退した犬同士で静かにまったりと過ごす子もいれば、何かしらの任務にあたり余生を過ごす子も。いずれも警察犬時とは違い、穏やかな生活を送っています。
まとめ
いかがでしたでしょうか(^ ^)!
1986年にドイツで初めて採用されたと言われている警察犬。最近ではその活躍ぶりも評価され、警察犬を導入する警察署も増えてきています。
きっとそれは、犬と人間だからこその結果とも言えるのではないでしょうか。
これからも多くの警察犬の活躍を期待できる様に、そして警察犬達が少しでも住みやすく暮らしやすい環境でいられる様に、今後も犬と人間、がっつりと手を取り合って過ごしていきたいですね。
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